作成:2021・01・11


お断り:恐縮ですが、個人的な感想と独断です。


 

気になるタクマーレンズの描写

 
 昔のフィルムカメラ用のオールドレンズは、2110万画素のEOS 5D Mark II クラスが限界で、それ以上は現代の高性能レンズが必要だと言われています。でも、3640万画素のK-1で撮影したタクマーレンズの写真が見るに堪えないかというと、まだまだいけそうな気がします。さらに画素数の多いα7RII ならどうでしょうか。新しい高性能レンズは後回しにしても、LM-EA7と中古とはいえフルサイズ版MILCのボディまで買ってしまったのです。

 普通の写真の良しあしは、写真の内容やセンスが最重要なのはさておき、見た目にピントが合っていればよく、際限なく拡大して見ることはありません。なんといっても諧調がとても重要で、バランスの良いコントラストと彩度がポイントになると思っています。どうも、タクマーレンズがまだまだいけそうな気がするのは、このへんを錯覚しているのかなぁとも思います。素朴にタクマーレンズでも被写体を写し取れれば、幸せな気分になることができます。
 解像力至上でも、ボケ至上でも、行き過ぎると魅力ある写真の本質が判らなくなりますが、タクマーレンズがどの程度までいけるのか見ておきたいと思って試写してみました。


タクマーレンズまとめて21本+Kレンズ1本とおまけ この写真に写っているものが全てです


 登場するのが好みのタクマーレンズばかりだからかもしれませんが、1本のズームレンズで焦点距離を変えて撮影したと錯覚するほど、タクマーレンズらしい素直な描写のレンズばかりです。それは、α7RII の絵作りの恩恵によるところが大きいのかもしれません。
 

 試写は、α7RII のISO感度とホワイトバランスはオートで、ダイナミックレンジオプティマイザーをオートで選択しています。クリエイティブスタイルはスタンダードです。
 試写するにあたっては、レンズの性格が顕著な絞り開放で、コントラストが明確になる日中に、LM-EA7でAFでピント合わせすることを心がけて撮影しています。正直なところ、絞り開放で、日中に、LM-EA7をAFでピント合わせをして試写するというのは、少し欲求不満になりました。この状態では実用的なシャープネスはわかるのですが、やはりMFでピント拡大しないと比較できるほどの試写になりません。
 α7RII では、AFで狙ってピント拡大して微調整ができません。位相差検出方式のAF精度ももうちょっとの印象です。MFの場合 5.9倍、11.7倍とピント拡大すると、充分にピントの山が判ります。望遠やマクロレンズでは、無理にAFでピント合わせするより、MFに切り替えて(この時LM-EA7は無限遠に戻ってしまいますが)ピント合わせしたほうが不便はあっても良さげです。
 とはいえ、実用的なシャープネスが見るに耐えれば良いと考えていますから、今回、試写したレンズは、優劣はあっても充分なレベルだと思います。そして、α7RII とLM-EA7のAFは、煩わしいところが少なくてとても快適な撮影でした。



 1.SMCフィシュアイタクマー 17mmF4と SMCペンタックス FISH EYE 17mmF4

KマウントのSMCペンタックス FISH EYE 17mmF4が登場した際に、周辺部部の画質の改善が謳われました。ずっと気になっていました。LM-EA7用に、M42-MマウントアダプターとK-Mマウントアダプターを用意すれば、SマウントレンズとKマウントレンズの交換が簡単になり、同一条件の撮影と比較が容易になります。SMCフィシュアイタクマー 17mmF4 と SMCペンタックス FISH EYE 17mmF4の周辺部部を比較してみました。
                                           


 2.SMCタクマー 20mmF4.5とSMCタクマー 24mmF3.5

αシリーズのボディとLM-EA7に広角レンズを付けた場合、AFの動作は開放なら素早く動き、使い勝手は快適で、単焦点のKFAマウント広角レンズの代替えになると言いたいところです。これらのレンズは、フィルタ径が58mmと当時の広角レンズとしてはコンパクトで、タクマーレンズとしては珍しく写りが良いとされていましたので、たいへん興味深いところです。
                                           


 3.SMCタクマー 28mmF3.5 と 前期型 スーパータクマー 28mmF3.5

スーパータクマー/SMCタクマー 28mmF3.5は、おすすめのオールドレンズの定番レンズです。世の評判は鮮明で硬いと云いますが、意外にもとろけるような描写も得意なはずです。ファットタクマー 28mmF3.5は、フィルムカメラ時代からひそかな人気者で、スーパータクマー/SMCタクマー 28mmF3.5 とひと味違うマニアックな秘密があるようです。
                                           


 4.SMCタクマー 35mmF2/F3.5 と 前期型 スーパータクマー 35mmF2

このSMCタクマー 35mmF2は、黄変レンズなのですが、ホワイトバランスがAUTOの設定だと問題は緩和されます。SMCタクマー 35mmF3.5は、標準レンズ同様の描写をするレンズです。α7RII とLM-EA7で、最初にこの前期型 スーパータクマー 35mmF2を使ってみました。重さがLM-EA7で使用できるほぼ最大のレンズになるからです。どれも、ひたすらフツーの写りで、ひと味違うマニアックな特徴なんてないようです。
                                           


 5.SMCタクマー 85mmF1.8 と SMCタクマー 85mmF1.9

差はあるのですが、どちらも、絞っても硬いと感じることはなく、開放でも合焦している被写体はしっかりと鮮明で、アウトフォーカス部分はきれいにボケてゆきます。SMCタクマー 85mmF1.8 と SMCタクマー 85mmF1.9は、開けて上品、絞って鮮明ですが、物足りないものを感じていました。とはいえ、標準55mm似の「素直な描写を楽しむ」とてもタクマー度の高いレンズです。
                                           


 6.SMCタクマー 105mmF2.8 とSMCタクマー 120mmF2.8

αシリーズのボディとLM-EA7にこれらのレンズを付けた場合、繰り出し量の制約からAFの動作は快適とは言いづらくなります。長焦点だとEVFでもピントは判り易いので、レンズのヘリコイドではっきり見えてきたら、そこからはAFで対応します。フィルタ径が49mmとコンパクトで、タクマーレンズとしては珍しく写りが良いとされていましたので、タクマーレンズのあら捜しがたいへん興味深いところです。
                                           


 7.SMCタクマー 135mmF3.5 と5枚玉スーパータクマー 135mmF3.5

早い話、LM-EA7に135mmレンズを付けても、本来のMFレンズとして使うのと大差なありません。これらのレンズは5枚玉と4枚玉ですから、差があって当然なのですが、フィルムでの写りからは両者の差に全く気づきませんでした。しかし、プリセット絞りの5枚玉では、とても新鮮で、植毛紙いらずと思いました。気づかれないよう同様の性能を狙っているのでしょうが、本当に差は判らないのか興味深いところです。
                                           


 8.SMCタクマー 150mmF4 とテレタクマー 200mmF5.6

どちらも、LM-EA7の繰り出し量では、AFで使うのは無理なのは承知です。SMCタクマー 150mmF4は目にウロコの甘い描写で、良い雰囲気でも鮮明さはもうちょっと欲しいかなぁと思います。テレタクマー 200mmF5.6は、200mmF4や200mmF3.5と違って、でかくない、重くない、でも暗い。SPやESII ではマイクロプリズムが陰るのでちょっと苦痛でした。α7RII のファインダーは明るいのですが、LM-EA7の繰り出し量が問題です。
                                           


 9.標準レンズ

標準レンズは、55mmF1.8と50mmF1.4がオールドレンズの定番になっていますが、ここでは、Pr/N:37109の黄文字のSMCタクマー 55mmF2、黄変レンズを避けて8枚玉スーパタクマー 50mmF1.4[Pr/N:35800]と黄変レンズのSMCタクマー 50mmF1.4[Pr/N:37908]をLM-EA7で使ってみました。8枚玉スーパタクマー 50mmF1.4は、黄変せず、7枚玉よりもシャープで、希少価値もあって世の評判は高評価です。正直、α7用の純正の標準レンズが欲しいのですが、お高くてまき餌レンズになっていません。
                                           


 α7RII にLM-EA7を使用する場合、レンズによってAF感度が違うことに気づきました。半押しAFを「切」にして開放でピントを合わせて絞りを絞ってレリーズするのがお約束です。ME-Fでは専用のSMCペンタックスAFズーム35〜70mmF2.8のフォーカシングボタンを押してピント合わせてからレリーズしました。親指AFも風流なものと思うことにして、あえて、室内でどの程度まで絞ってもAFが機能するか試してみました。
 

 


戻る   次へ


   更新日 : 2021・01・11.

 

 

    余 談

[メモ] SMCタクマー
 当初は、マルチコーティングされたレンズには、Super Multi Coated Takumarと言う名前が付けられました。新レンズではSMC Takumarという名称に省略されました。それまでの Super Multi Coated Takumarは、SMC Takumarという名前に一新されることはなかったので、SMC Takumarと脳内変換することにしています。
 実際にSMC Takumarと刻印されたのは、標準レンズのSMC TAKUMAR 1:1.4/50、1.8/55、2/55 と交換レンズのSMC TAKUMAR 1:3.5/15、SMC TAKUMAR-ZOOM 1:4/45-125、1:6.7/135-600 です。

 SMCタクマーレンズは、カラーフィルムが一般的になった時代背景に対応して、鮮やかでニュートラルなカラーバランスに揃えられていることが謳われていました。内面反射の低減もあるのですが、レンズ枚数が少ないレンズではあまり実感はありません。一部の例外を除いて開放測光に対応するメカニズムが取り入れられているのが特徴です。
 随分昔ですが、同じ場所で撮影して確かめたことがあります。SMCタクマーレンズのカラーバランスが揃っているかは、ネガフィルムでは補正されてしまうので判りませんでした。今では、EOS 5DやK-1のホワイトバランス調整は強力なので判りません。
 スーパータクマーなのに、マルチコートされたレンズエレメントが使われているものに巡り合ったこともあります。研究本には Multi-Coated Super-Takumar 1:1.4/50 と刻印された標準レンズの写真も掲載されています。

余談の先頭に戻る

 

[ひとり言] レンズの良しあし
 レンズの良しあしは、タクマーレンズが現役だった時代は、まずシャープネスでしたが、ほかにコントラスト、像面歪曲、歪曲収差や色収差なども評価のポイントでした。近年になって、ボケ(Bokeh)という項目も注目されていますが、タクマーレンズの時代には「ボケ味」とか言われても、曖昧であまり相手にされませんでした。コンパクトなフィルタ径のレンズなので、玉ボケ(丸ボケ)ブラシで描いたようなボケを望むことは、タクマーレンズでは無理です。ボケは、開放ではレモン型になるし、自動絞りの絞り羽根は直線的な五角形や六角形なので玉ボケにはなりません。"美ボケ修正ツール"の登場を待ちましょう。
 大概のタクマーレンズは、見かけの解像力を追及していないので、輪郭が甘いのですが二線ボケはあまり気になりません。ただし、ふんわりとした厚みのあるボケなのか、単に像がにじんでいるのかは、はっきり判別できません。また、コントラストを保ちつつ、アウトフォーカス部分への輪郭はなだらかに移行して、立体感、質感を感じさせてくれるタクマーレンズもあるのですが、フレアで白カブリすると全く台無しです。

余談の先頭に戻る

 

[ひとり言] レンズのボケ"Bokeh"
 タクマーレンズにシャープネスを期待するのは無理。ボケなら楽しめるんじゃないの。という当時のカメオタの当てつけにもめげずにペンタックス一筋の先人達でした。今では、レトロなオールドレンズの味わいがもてはやされています。皮肉なことです。

 平行な光を一点に集めきれなくなったところがシャープネスの限界で、それがレンズの性能の全てだという一言居士は、さすがにいなくなりました。今では、英語でも"Bokeh"といいます。ワタシも、エッジが立たないで芯のある、画像の輪郭が柔らかに崩れたようなボケを有り難がっています。世間では、ピントの合った被写体の輪郭は鮮明で、ボケた被写体の輪郭のエッジが立っているように見えず、なだらかで、ふんわりとした厚みのあるボケが良しとされています。 ・・・ やっぱり、訳が分からないなぁ ・・・
 コンパクトでシャープネスを追及していた頃のズームレンズなどでは、アウトフォーカス部の被写体のエッジが立って二重に見える「二線ボケ」が目障りで、きれいな背景にならないと評価を落としていました。

 価格や図体はさておいて、銘レンズほどボケ綺麗というのが、本来の道理かと思います。

 さて、Silkypixの新機能の"線形ぼかし"はなかなかきれいです。理想とする"美ボケ修正ツール"にはあと一歩ですね。

余談の先頭に戻る

 

[ひとり言]
 ピント拡大は、5.9倍、11.7倍の画像がモニタいっぱいに表示されます。三脚を使う時でもないとピントの拡大位置を動かすことはありません。等倍の画像に拡大した画像をインポーズして表示できないものかと思います。シャッターを切れば元に戻るのはよいところです。

 余談ですが、昔、SMCペンタックス 20mm F1.4というレンズが発売予告されていましたが、結局は登場しませんでした。高性能レンズの指標の一つは、明るいレンズだそうで、幸福な時代になったなぁと感じます。

余談の先頭に戻る